私はラジオを比較的、聴く方です。
しかしマニアと呼べるほど傾倒しているわけではありません。
最初にラジオの魅力にどっぷりとはまってしまったのは、まだ小学生のころでした。
九州の田舎で育った私は、兄から貰ったポータブルラジオをよく持ち歩いて聴いていました。
今の時代、皆様がスマホで世界とつながっているように、その頃の私はラジオで世界とつながっているような気がしておりました。ラジオのスピーカーのその先は、キラキラした大都会の何だかカッコイイ何か?をイメージしていたのだと思います。
夜になったら星しか見えない九州の田舎の暮らしは、今思うと懐かしくそれはそれで素晴らしいのですが、何もない暮らしの良さに気が付くのは何でもある都会で暮らすようになってからでした。
ある夜、母屋の外にある風呂に入っていると、突然、九州朝日放送のラジオで私のハガキが読まれました。
まったく読まれるなんて思っていなかった私は、風呂を飛び出して走り回ってわーわー叫んでしまい、家族は何事かと大騒ぎになってしまいました。生まれて初めて書いたラジオへの投稿でした。
もしかしたら人生であれほど興奮したことは無いかも知れません。
中学生になるとこっそりアルバイト(土木関係)をして、お金を貯め、友達から「SONY・スカイセンサー5900」というラジオを中古で買いました。(新品は高くて買えませんでした)
短波放送が聴けるというラジオで、その頃ものすごく流行っていた記憶があります。
「ソニー、スカイセンサー!!」というCMが沢山流れていたと思います。
「これでオーストラリアのカンガルージョッキーが聴ける!!!」と思い、少年の私は更に大興奮だったのですが、結局、短波放送の受信は方法も楽しさもよく良くわからず、もっぱらオールナイトニッポンばかり聴いていました。
オールナイトニッポンを聴いていると、なんだか少しだけ大人の話題についていけているような気がして、勉強に集中できるはずもない私は、ダメダメな中学生生活を送るのでした。
そこから数十年が経過し、すっかりラジオの魅力も忘れていた私は、健康のために始めた散歩の中で、改めてラジオの素晴らしさに気が付くのです。

ラジオの素晴らしさ、ラジコの素晴らしさ。
ラジコはインターネットラジオです。スマホやパソコンで聴くのですが、素晴らしいのはラジオを音響データの受信で聴くと、驚くことに雑音が全くありません。
昔はあんなに雑音を消すことに執念を燃やしていた私は、まるでスタジオのすぐ横で聴いているようなクリアな音で聴こえてくることに、正直驚愕しました。
昔、AMは雑音の中で聴くもので、クリアなラジオはFMと決まっていました。
なので昔の私はFMレコパルに掲載されていた情報(?)を頼りに、窓の外に針金を張って、そこにラジオ本体のアンテナを絡めて、なんとか雑音を消せないかと奮闘したりしていました。
もうそんな必要はなくなってしまいました。
スマホで聴く。
それだけですべてが解決してしまうのです。
そしてなんとも便利なのはタイムフリー機能です。聞き逃した番組を後から聴くことができます。
最初はFM東京やJ-WAVEなんかを聴いていましたが、最近はもっぱらAMです。
ここ数ヶ月、特に気に入っている番組は、「文化放送・大竹まこと・ゴールデンラジオ」です。
最初のころは楽しい番組ばかり探していました。
もちろんバラエティー、ニュース、政治経済のコラムのような内容の番組も刺激が多く、楽しく聴いていました。
しかし時間が経過すると少し疲れてくるのです。
情報がぎゅっと詰まった内容の番組は、料理で表現すると「味の濃い美味しい肉料理」のように感じました。
すると次第に私は、薄味の「筑前煮」のような優しい番組を無意識に好きになってしまったようです。
大竹まこと・ゴールデンラジオ で好きなコーナーがあります。
「日々、黄金の歴史あり・ザ・ゴールデンヒストリー」
です。
大竹まことさんが多くのリスナーの方々に、長年にわたって何故人気があるのか、本当に心から納得しました。その語り口は、日常を大切に生きているすべての人たちの心を、見事に代弁されながら語り掛けてくれます。
そこには華美な脚色のない、まさに大竹まことさんにしか創れない世界観がありました。
私の人生にも、また他のすべての方々の人生にも、一人一人の黄金の歴史があることを気づかせてもらいました。
番組は13時からですが、ゴールデンヒストリーは14時からです。
何事にも躓きながら生きてきました私には、聴いているだけで胸が詰まるような、それでいて宝石のようなお話が、毎日、丁寧に語られてまいります。
「丁寧に語る」これが、なかなか出来るようで出来ません。
私は大竹まことさんの放送を聴きながら、明日も頑張ろうと思ってしまいます。