私の怖い体験
皆様は女性の「勘」といいますか、心をのぞき込まれるような鋭い「視線」を感じたことはございますか?
少し前のお話です。
私が一人でテレビを観ておりますと、自宅で麻婆豆腐を作る時、仕上げであるお菓子をひとつ隠し味に使用すると大変本格的な味に仕上がるという番組がございました。
なんとそのお菓子を一粒入れるだけで、本格中華の麻婆豆腐の味に変身するらしいのです。
そのお菓子とは・・・
ハイチュウでした。
「良いことを教わった」
と、私は思いました。
そして
数日後。
私は妻と「お蕎麦」を食べに出かけました。
そこで私は思いつきました。
「なぁ、ちょっと・・・」
「・・・」
「クイズがあるんだけど・・・」
「当たったら、・・・何かある?」
「なんでもいいよ。欲しかった洋服とか、いいよ、買っても」
(どうせ当たるわけがないし)
そこで私は先日観たテレビの知識を、さも我がことのようにお話しました。
「それを仕上げに入れるだけで、本格麻婆豆腐が出来るんだってさ。何だと思う?」
「・・・なにかなぁ・・・」
「ヒントはお菓子ね。普通にスーパーで買えると思うよ。ちゃんと名称まであててくださいね。」
「当たったら、高い服でもいいの?」
「もちろんいいですとも」
「・・・」
「・・・」
私は忘れておりました。
奥さんが恐ろしいほどに勘が鋭いことを。
じっと目をみられますと、心の中を見られているように感じました。
「・・・・・!!(汗)」
まずい!っと思いました。
このままでは「ハイチュウ」を当てられてしまう、そのように感じました。
・・・・・・(汗)・・・・・・
そこで私は、子供のころにしか食べた記憶の無い菓子を頭の中にイメージしたのです。
それは・・・
麩菓子です。
正直、どんな味かは昔のことで忘れていて分かりません。
しかし、ここは「麩菓子」を頭の中にイメージしたのです。
高価な婦人服を買ってあげたい気持ちはあるものの、ちょっと懐具合が厳しい状況でした。
先ほどまで「当たるわけがない」と安心していたものの、その時は徐々に不安が広がっていくのでした。
奥さんには誠に申し訳なく思ったのですが、「ハイチュウ」を当てられてしまうわけにはまいりません。本当にごめんなさい。
・・・・・・・・・・・
ほどなく蕎麦が運ばれてまいりました。
私はいそいそとつゆに薬味を入れながら、蕎麦をひと啜りしました。
奥さんは、じっと運ばれてきた自分の蕎麦を見つめながら、一言おっしゃいました。
「・・・麩菓子しか浮かばない・・・」
私は、箸を落としてしまいました。